録画した日〔2013/3/15:サムライTV〕
昭和57年上半期に行われたタイガーマスクのシングル4戦。
いずれも“栄光のディファジオメモリアル”WWFジュニアヘビー級ベルトを賭けた闘いです。
6月の蔵前決戦で実現した「メヒコの宇宙超人」ウルトラマンとの一騎討ち。
梶原劇画と円谷特撮によるイデオロギー闘争の意味合いを持った、昭和のチビっ子にとって重要な一戦でもあります。
(ただしウルトラマンは円谷プロ非公認レスラーだった模様)
しかしこの試合で注目されたのはそんなチビっ子向け覇権争いではなく、超過激アナ・古舘伊知郎(この試合ではレポーター役)によりもたらされた超特ダネ情報でした。
それによると、タイガーの新必殺技「スペースフライングタイガードロップ=宇宙飛行虎爆弾(訳/古舘)」が今夜初披露される可能性が濃厚との事。
金曜8時ゴールデンタイム、昭和の茶の間は「その瞬間」へ向けて俄然ボルテージが上がります。
そしてやってきたその瞬間。
イマイチの凡戦を帳消しにするかのように炸裂した新必殺技は、側転して体を捻って場外のウルトラマンにフワリと突っ込む超立体四次元殺法でした。
一直線に突っ込んだほうが…、は言いっこなし。
ヒーロー業界のライバルに能力の絶対値の違いを見せつける事にこそ、この新必殺技の意義があるのでしょう。
ちなみに解説の東スポ・櫻井さんによると、中間のウルトラ側転には“回転で目を眩ませる効果”もあったようです。
2月の大阪で対戦したのは、ウルトラマンと同じメキシコ出身のベビーフェイス(セコンドはダイナマイト・キッド)。
どう贔屓目に見てもベビーとは言えない、オバちゃんパーマにポッチャリ体型のルチャ戦士です。
伝統的にこのタイプのメキシカンはそつのない実力者であるもの。
ベビーフェイスもその例に漏れず両者伯仲の熱戦となりましたが、最後は芸術的なタイガースープレックスを炸裂させてタイガーがベルト防衛に成功です。
4月の蔵前国技館で行われたスティーブライト戦は、虎の穴(梶原ワールド)vs蛇の穴(ビリー・ライレージム)の代理戦争。
天才・タイガーは、メキシカンとはガラリと趣の異なる英国系レスラーとも充実の名勝負を繰り広げます。
とても29歳(当時)とは思えぬ渋さ&老獪さ&薄毛を誇るスティーブライト。Jrヘビーとは飛んだり跳ねたりの同義語ではないんだという事を身を持って証明してくれました。
昨今の新日ジュニア戦線に決定的に足りないのがこの系譜のレスラーだと言えるでしょう。
凄玉テクニシャン・スティーブライトの大ブレークにより、タイガーのベストバウトに推す声も多く聞かれるこの試合。
しかしよくよく考えれば、いぶし銀に真っ向お付き合いしながら飛んだり跳ねたりも全開だった佐山タイガーこそ最強の凄玉なのではないでしょうか。
英国系ついでのもう1試合は、5月大阪大会のブラックタイガー戦。
NWA+WWFの世界初2冠王に挑んだこの一戦も、タイガーの歴代ベストバウトの呼び声が高い名勝負となりました。
この一戦が伝説レベルである理由は、空前絶後のフィニッシュムーブにあります。
超過激な語り部・古舘伊知郎を持ってしても「身を翻して宙に舞った」としか表現できなかった仰天のラウンディングボディプレス。
この技のフォロワーは数多かれど、ここまでの衝撃とクオリティを再現できる選手は決して現れることはないでしょう。
もはやぐうの音も出ない充実の4試合。
天才・佐山タイガーが搭載する段違いのスペックをイヤというほど見せ付けられました。
そして特筆すべきはバラエティ豊かなライバル達。いくら天才でもプロレスは1人じゃぁできません。
異例の元旦決戦に幕を開けた昭和57年の新日は正真正銘の黄金時代。
こんなスーパースターが金曜8時きっかりにTVに登場していたのだから至極当然の大ブームだったのでしょう。
当時私は小学3年生。プロレスマニア純正培養の環境を与えてくれた佐山タイガーにひたすら感謝です。