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2015/04/30

太陽にほえろ!【最終章】#718「そして又、ボスと共に」(最終回)

録画した日〔2015/4/16:日テレプラス〕

14年にわたって放送された名作ドラマの最終話(放送日:S61/11/14)。
結果的に石原裕次郎の遺作となってしまいました。
七曲署「捜査一係」のド真ん中にポジションを取った西部警察・大門。
タレサンなしのマジメ横分けスタイルで、番頭格・地井武男(トシさん)と現場教育係・神田正輝(ドック)に指示を与えます。
大門は病気療養に入ったボスの代理として4ヵ月前(#706)に赴任。
全世界公認の裕次郎イズム正統後継者だけあり、驚くほど自然なボスっぷりで個性派揃いの捜査一係を牽引します。
ヤマさんやゴリさんはもういない終焉期の七曲署。
現場を走り回るのはコネ1本のお天気野郎・石原良純(マイコン)や、欽ちゃん軍から抜擢された西山浩司(DJ)などのフレッシュな面々です。
ちなみにDJが赴任したのは大門と同じ日。つまりボスとはここまで一度も顔を合わせていません。
最終話のストーリーは、何者かに銃撃拉致監禁された又野誠治(ブルース)を一係が全力捜索するというもの。
ブルースは赤ちゃんが生まれたばかりでこの日は奥さんの誕生日。
そんなビンビンの殉職フラグを払拭すべく、我らがボスがついに立ち上がります。
全国1億2千万がお待ちかねのボス復活は放送開始15分過ぎ。薄暗い部屋に1人佇み、ドアを開けた大門へ小粋なご挨拶を投げました。
いわばケガの功名で奇跡的に実現した七曲署でのボスvs大門ツーショット。転んでもただでは起きない、これぞ日本最強エンタメ軍団の真骨頂ではないでしょうか。
ボス参戦でますます士気が上がる捜査一係。
カメラ側を空けたデスク囲みミーティングなどの定番ムーブも復活し、容疑者は徐々に絞り込まれてきました。
こうして参考人として浮上したのは容疑者の妹。
真面目な看護師さんという事もあって現場は追求を自重気味でしたが、ボスは「かまわん、連れて来い」とトップダウン。ブルースのためリスク承知の大勝負です。
聴取はまずトシさんが担当。兄の居場所について頑なに口を閉ざす妹に対し灰皿をひっくり返して激昂してしまうトシさん。
するとオブザーバー的立ち位置だったボスが勇躍ポジションチェンジ。ここから、後に伝説へと昇華する入魂ラストメッセージをブチ上げます。
「怖い刑事だねぇ、あの人。机叩くなんて野蛮だよなぁ」とトシさんを軽くdisったボスは「いやぁねぇ、オレはねぇ、4年前にさぁ、心臓を切った大手術をしたんですよ」とリアルな告白。
そしてトシさんが忘れてったタバコを手に「吸っちゃおかなぁって思ってんだけど♪」と、看護師である容疑者妹の前で医師の禁煙令をブチ破るモーションを仕掛けます。
「良くないんだろ?」と聞きながら「ちょ、ちょっとだけ♪」とお茶目にタバコをふかし、ゲホッゲホッと苦しく咳き込んでしまったボス。
果たしてこれはドラマなのかリアルなのか…。
最強スターにまさかのシュートマッチを仕掛けられた無名女優(?)桂田裕子さんはこの時点で完全に戦意喪失です。
おいしそうに一服したボスは「いやぁー、はぁ、あぁ、なんせ5年ぶりですからね…」「でもイイもんだねぇ、へへっ」とニンマリ。
この2分近くのタバコ芸はあくまで前フリ。事情聴取というアングルを借りたボスの伝言はここから本題へと突入します。
ガチガチの桂田さんの背後を取り「命って奴ぁ何にも代え難く、そしてこう、重い。大切なものだ」と静かに語るボス。
そして「そうだなぁ、あれもう何年になるかなぁ」「僕の子分で、背の高い、ちょっとキザなね、スコッチっていう男がいたんだよ」と現実でも早逝してしまった部下・沖雅也のエピソードを語り出しました。
「ここ一番て時に吐血してねぇ」「口の周り真っ赤にして死んでった」はドラマの上でのスコッチの話。しかし沖雅也の最期を知っている茶の間はこれをリアルなものと受け止めたでしょう。
さらに「部下の命はオレの命」「命ってのはほんとに尊いもんだよね」と続けたボス。
後付けと言えばそれまでですが、ボスはこの時すでに自分に残された命を測っていたのかもしれません。
「もうやめたほうがいいね」「じゃあ、もう一服ね、いやぁ、もったいねぇな…」と満足そうにタバコをもみ消してボスの取り調べは終了。
ちなみに完全に置き物状態の桂田さんは「(兄の居場所は)横浜です」とこの後即効ゲロってしまいました。
7分近くに渡ったボスのひとり語り。最後のセリフは「ありがとう」でした。
結果としてラストメッセージとなってしまったわけですが、リアルタイムで見ていた人からすればこの後1年経たずして起こる出来事などさすがに知る由もなし。
ともすれば「粋なアドリブ」で終わっていたかもしれない、時間に磨かれた不滅の名場面です。
事件はここから急展開して無事解決。幸いにもブルースが殉職することはありませんでした。
なお翌日にはさっそく七曲署管内で人質事件が勃発。
完全復帰のボスは「はい一係」「人質ぃ!?、ちょっと待って下さいよ♪」とラーメン屋の出前受けのような軽いノリでこれを部下に丸投げします。
そして現場に向かう部下達を頼もしげに見送るボス。
これは七曲署の日常風景。いかにも「To be continued」的なエンディングですが、この定番シーンのみならずボスの勇姿までもがこれにて見納めとなってしまいました…。

ボスの伝説シーン目当てで初めて見た最終話。ちょっと気になったのはプリミティブでカッコいい例のテーマ曲がいわゆる「打ち込み」系の安っぽいノリに改悪されてしまっていた事です。
ネット情報によるとこれはボス休職&大門参戦のタイミング(#706)で行われたそう。ボス不在という未曾有の事態が迷走を招いちゃったのでしょうか…。
「太陽にほえろ」の金曜夜8時は私にとって新日「ワールドプロレスリング」のゴールデンタイムでした。
よってあまり見た事はないはずなんですが、そのノリや世界観は一般常識のように身に付いている感じ。
歳を取ったオッサン目線で見るとボスのスリーピース&ストライプシャツの着こなしがなんとも堪りません。
ボスなくしては成り立たないTVドラマの金字塔。8月の休職から4ヶ月あまりでの最終回=打ち切りは妥当な決断だったのでしょう。
自らの意志によるエモーショナルな幕引き。もう出来過ぎなくらいとにかくボスは最後の最後までカッコ良かった…。昭和最強のレガシーです。