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2013/08/24

ドキュメンタリー同期生「土俵探し 今なお 〜 大相撲 昭和63年春組」

録画した日〔2013/8/12:NHK総合〕

3横綱1大関を輩出した大相撲昭和63年入門組の現在を、貴乃花と曙を中心に追ったドキュメント。
いろいろな事情があるのか、もう一人の雄・若乃花は全く登場しませんでした。
7月に名古屋で行われたという同期会。第64代横綱の曙は堂々とお誕生席に陣取ります。
角界という究極の縦社会において「横綱」は永久不滅の絶大な大正義。
最近は原点・両国国技館でママチャリに乗って大乱闘をブチかますなど迷走もありますが、同期1人目の「横綱」は仲間内でも圧倒的な存在感を誇ります。
その同期会で「貴花田です。相撲部屋やってます」と近況報告した一番弱そうなヒョロヒョロ野郎。
しかしこの男こそ、曙とダブルスコア22回の幕内最高優勝を誇る第65代横綱・貴乃花です。
会場が名古屋(メンバーのうち1人が経営するちゃんこ屋さん)だったのも、この男の7月の”仕事場”が名古屋だから。最強の出世頭を手厚くケアする大横綱シフトが敷かれたのでしょう。
ドキュメントの核は、デカいオッサンの飲み会ではなく入門から25年が経過し40代を迎えた63年組のリアルな姿。相撲茶屋への挨拶やら吉本新喜劇への進出など、業界を支えた大横綱がこなす泥臭い営業活動も描かれました。
「本丸」相撲協会の理事という一昔前なら盤石のポジションにいる貴乃花ですが、相撲というジャンルが瀕死状態の2013年現在では同期の中で最も過酷な戦場に身を投じているとも言えます。
その本丸を飛び出した曙は、国営放送の流儀なのか現職を「格闘家」として紹介されました。
しかし本人は自分語りパートでしっかり「プロレス」と発言。それをふまえてZERO1リングでの活躍がオンエアされています。
ちなみに大仁田との電流爆破マッチやボノタイガー、グレートボノ、荻窪(および御徒町)のステーキ屋についての言及はありませんでした。
曙について特筆すべき事項は、TATOOにあたる部分をバンテージで隠し東関部屋で後進の指導をしていたという事です。
外国人としてトップまで昇り詰め、若貴フィーバーの狂乱に身を置いた経験は誰が何と言おうと唯一無二の巨大な財産。
その人柄も含め、曙の復権は相撲界にとって大きなメリットがあるのではないでしょうか。
プロレスファンにとって見逃してはいけないのが、元GHCヘビー級王者・力皇猛の同期会参戦。
リングの業績では曙を凌駕した怪力無双ですが、互助会大関・魁皇と同様にこのドキュメントでは現在の活躍をフィーチャーされることはありませんでした。(台詞、紹介とも一切無し)

昭和63年は私が高校に入学した年。相撲界は中卒が基本なので、花の63年組の面々は私と同級生という事になります。
実際に貴乃花、魁皇、力皇は昭和47年生まれの同い年(曙は3つ年上)。
志半ばで引退した人のエピソードも含め、登場人物各人の立ち位置に親近感、リアルさを感じるドキュメントでした。
そんな63年組の中でやっぱり頑張ってほしいのは貴乃花。
毀誉褒貶が相半ばするキャラではありますが、メリットのある幾多の選択肢を捨て、マイナス要素しかない落日の組織に残りそれを再構築しようとする姿勢はもっと評価されるべきではないでしょうか。
昭和63年組は、バブルを謳歌できなかったけどバブルのツケを負わされている世代。
その世代のヒーロー・貴乃花には、相撲界の同期だけでなく我々同世代のオッサン達の誇りが託されています。