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2015/05/02

プロレスクラシック(49) Mr.プロレス ハーリー・レイス特集

録画した日〔2014/4/14:日テレG+〕

昭和57年秋のジャイアントシリーズからピックアップされた6試合。
「Mr.プロレス」ハーリーレイスはUNヘビー級王者として参戦しました。
おなじみのトリコロールジャージでキメた美獣。10.24北見大会では前王者ジャンボを迎え討ちます。
UNタイトルは8.1後楽園で奪取。
日テレインチキ実況陣によると、それからここまでディックマードック、ディックザブルーザーという屈指の猛者相手に防衛を重ねてきたとの事です。
一方、虎の子ベルト奪還に熱く燃えるジャンボ。
昭和57年はパンツを黒に買い替えたり、ルーテーズからヘソ投げ式バックドロップを習ったりと後の「怪物化」へ布石を打った重要年。
しかし、ここでレイスを倒さなければ無冠での年越しが決定してしまいます。
そんなベルトへの思いの差が出たのか、レイスはジャンボの空中胴締め落とし(ルーテーズ直伝)で王座陥落。
ジャパニーズローカルタイトルで屈辱の3ヵ月天下。世界最高峰NWA戴冠6度のMrプロレスとしては痛恨の取りこぼしです。

UN陥落から2日後の帯広大会、気分一新のレイスはチャレンジャーとしてPWF王者・馬場さんと対峙しました。
実はジャンボ戦は叩き台、美獣の真のターゲットは馬場さんのクビだったのでは?
両雄12年来の因縁抗争を鑑みると昭和プロレスマニアの妄言と一概に片付けることはできないでしょう。
試合終盤、馬場さんの32文ロケット砲を交わしてノッソノッソとコーナーポストを登るレイス。もちろん登頂を待ってた馬場さんにデッドリードライブでビターンと叩き付けられて大の字バンプです。
ジャンボとのUN戦では見られなかった王道ムーブ。こんな所からもこの一番に賭けるレイスの本気度が見て取れます。
執念の美獣は馬場さんの河津掛けをスカすとなんともう一度トップロープ最上段へ。
そして今度は超高角度ダイビングヘッドをズバリ成功させ、馬場さんが3年8ヶ月守り続けたPWFベルトをついに強奪しました。

狙った獲物を一発で仕留めた美獣は、最恐夫人・イボンヌさんも観戦する11.2愛知県体育館で威風堂々リターンマッチを敢行。
トリコロールジャージにPWFベルトは実に良く映えます。
愛知県体育館といえば、レイスにとっては昭和54年にNWA王座を奪取されたゲンの悪い会場。その時の相手はもちろん馬場さんでした。
そんな幾多の因縁渦巻く2人ですが、実況の倉持アナに「私生活では親友どうし」とあっさりネタバレをカマされるなど和気藹々ムードが漂っているのも事実です。
デッドリードライブ芸こそ出なかったものの、パイプ椅子取り合いやレイスの意味不明逆立ちバンプなど味わい深い攻防が展開されるリング上。
王座移動から即リマッチとくればベルトは元サヤというのが昭和プロレスの鉄則。そんな予定調和ムードも相まって会場はほんわかと盛り上がっていたのですが…。
馬場さんの奪還路線をブチ壊したのはもちろんNWA公認レフェリー・ジョー樋口。
例によって不可解なポジショニングを取るジョーは、もみ合いの中馬場さんの水平チョップをアゴの先端に食らってしまいます。
そして馬場さんの悲劇はこれにとどまらず、ジョーの100倍信頼できるサブレフェリー・和田京平までもがレイスとごっつんこして失神してしまいました。
レフェリー不在の無法地帯でもみ合う両雄。頃合いを見て目を醒ましたジョーのジャッジはもちろん「両者反則」です。
馬場さんの、というより全日本プロレスの至宝がまさかの海外流出。奪還は翌年の2.11セントルイス大会まで待つこととなります。

このジャイアントシリーズの看板はレイスではなく超獣ブルーザーブロディ。
4月にドリーファンクJrを粉砕してインターヘビー王座に返り咲き、10.20青森大会では挑戦者に若手のホープ・天龍を迎えました。
大ボラ倉持アナによれば今回の天龍抜擢は「ジャイアント馬場の大英断」だとの事。
ブッカーとしての責任なのか馬場さんはなんとスウェット姿で天龍のセコンドに。当時まだまだアマちゃんだった「Mrプロレス」天龍にとっては実に心強い援軍です。
社長の全面バックアップに意気揚がる天龍。しかし馬場さんはゴング直後にとっとと本部席へ移動。椅子にふんぞり返って戦況を見守ります。
そんな馬場さんの適当っぷりを知ってか知らずか天龍は大健闘。
思わぬ苦戦を強いられたブロディのフィニッシュは超獣らしからぬ逆さ押さえ込みでした。

インターベルト防衛とともに今シリーズの超獣に課せられた重要タスクは、4.22東京体育館で仲間割れしたジミースヌーカとのけじめマッチ。
因縁のシングル初対決は11.2愛知大会で実現しました。
ブロディとの仲間割れ直後、あっという間にニューヨークWWFのドル箱スターへと伸し上がったスーパーフライ・スヌーカ。
今や稼ぎだけで見ればブロディやレイスより格上、昭和外人レスラーのステータス「シリーズ終盤特別参加」として半年振りの来日です。
試合はどちらも傷付かない体裁で6分弱のノーコンテスト決着。
当時クソガキだった私にとっては「スヌーカがかわいそう、みじめ」という印象。
しかし、盟友の立身出世を見届けたブロディの感慨やWWF看板を強引にブッキングした馬場さんの政治力など、ポジティブネタ満載のドリームマッチだったと言えるでしょう。

11.2愛知大会に登場したニコリボルコフ&ドリームマシーンの屈強タッグ。
後のWWE殿堂者でもあるロシアの白熊・ボルコフはソ連じゃなくて旧ユーゴ出身。プロレス史上屈指の「いい人」として有名です。
ボルコフ組の対戦相手はドリー&鶴田。
根っから「いい人」のボルコフは日米師弟コンビの卑劣な恥ずかし固めにもしっかりバンプを取ります。
それにしても気になるのがコーナーに控える謎の覆面・ドリームマシーン。ヤツはいったい何者なのでしょうか?
ドリームマシーンの正体はあのケンドーナガサキである模様。ネット情報を見るまで私はずっと外人レスラーだと思ってました。
ケンドーギミックを封印した理由は不明。
何だかもったいない起用法ですが、幾多のガチ伝説、規格外エピソードを誇る凄玉だけに全日サイドがその牙を折る一種の防衛策だったのかもしれません。

そんなナガサキも恐れおののいたであろう「KING」「ハンサム」ハーリーレイス。規格外のトンパチエピソードは数知れません。
最高峰NWA戦線から一歩下がっていたこのころ。信頼する馬場さんのもとでお客さんからもリスペクトされ、日本マットはかなり居心地が良かったのではないでしょうか。
いまだNWA幻想に憑かれている私にとってレイスモデルこそ世界最高峰の証。ハンサムかどうかは知りませんが永遠のKING、Mrプロレスです。