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2013/09/02

全日本プロレス王道史(#19)

録画した日〔2013/3/30:サムライTV〕

「'81世界最強タッグ優勝戦」で突如全日マットを強襲したスタンハンセン。
翌82年の新春ジャイアントシリーズから本格参戦を果たしました。
7年ぶりの全日マットで最初に迎えたビッグマッチは、2月4日の東京体育館決戦。年末に「土足」で上がりこんだ先の家長・馬場さんが対戦相手です。
セコンド役はなぜか上田馬之助。後ろで帰り支度してるのはニコリボルコフでしょうか。
この日は他にAWA王者・ニックボックウインクルやマスカラス兄弟、パットオコーナーも参戦していましたが、ハンセンは彼ら大御所を差し置いての看板待遇。
ドレッシングルームのボスとしての貫禄すら漂う当時32歳の不沈艦です。
一方、全日正規軍のドレッシングルームでは、大決戦前とは思えない柔和な表情でPWF王者の馬場さんがインタビューに答えます。
まあ馬場さんからすれば、ハンセンを引き抜いて新春シリーズのメインに据えた段階でひと仕事終了したようなもの。
憎っくき猪木からのビジネス的勝利を確信した余裕の心持ちなのでしょう。
とは言え、試合が始まると馬場さんはいつもの2倍3倍増しの大ハッスル。
豪快無比な32文ロケット砲や巧みなインサイドワークを駆使した腕殺しなど、馬力に任せて猛ラッシュを掛ける不沈艦と互角以上の闘いを繰り広げます。
もちろん最後は脆弱性レフェリー・ジョー樋口の失神KO劇でドロー決着と相成ったのですが、サイズ的にどデカいスケールの2人による真っ向勝負は見応え十分。
この年の年間最高試合にも選出されるなど、ビジネスどころかパフォーマンスでも憎っくき猪木を凌駕した、馬場さん快心のビッグマッチだったと言えるでしょう。

100点満点の東京決戦から2ヶ月半後に開催された「グランドチャンピオンシリーズ」。
ファンクスやレイス、スヌーカ、デビアスらの超豪華メンバーが集結したこのシリーズですが、断然の主役となったのは日本初結成となったハンセン&ブロディの超ミラクルパワーコンビでした。
異国の地で遂に邂逅を果たした最強コンビは、4月20日の愛知大会で馬場・鶴田のインタータッグ王座にチャレンジ。
しかしこの試合、レフェリーがジョー樋口なのは子供が親を選べないのと同じ不条理ですが、形式が「60分3本勝負」となっているところが如何にもアヤしい。
王者の魂・馬場さん主導の痛み分けムードが満ち満ちたタイトルマッチとなります。
そうしたイヤな予感を抱きつつ、超ミラクルパワーコンビの巨大連係発動に胸をときめかせる全国3000万プロレスファン。
その夢はいきなり1本目、超獣のスローで不沈艦が黄金の左腕・ウエスタンラリアットをブチかますという圧巻のフィニッシュで現実のものとなりました(犠牲者はジャンボ)。
しかし続く2本目3本目は、やっぱりというか何というか超獣の知恵袋・バックロブレイやら超獣の小道具・チェーンやらが入り乱れる壮絶カオス状態に。
ジョー樋口が光の早さでサジを投げ、超ミラクルパワーコンビによる初挑戦初戴冠の偉業は幻に終わってしまいました。

ハンセンの全日マット(再)デビュー戦が行われたのは1月15日木更津大会。
対戦相手は阿修羅原で、ブレーキの壊れたダンプカーvs野生のダンプガイという働くクルマ対決となりました。
その結果はたった3分弱の瞬殺劇。
ダンプガイ・原の豪快なやられっぷりが光る、説得力抜群のお披露目マッチでした。

我らがハンセン一色のはずの今回のラインナップに、なぜか割り込んできやがったのが大仁田厚の米国遠征(シャーロッテコロシアム)。因縁のチャボ・ゲレロを下してNWAインタージュニアベルトをゲットしました。
試合後は涙の即席ヒーローインタビュー。左からテリーファンク、大仁田厚、倉持アナと並ぶ大ボラ三連星は圧巻のクオリティです。

「ハンセンですよ!」の衝撃が冷めぬまま、文字どおり鳴り物入りで全日マットに登場した不沈艦。
もちろん私も胸踊らせて見ていましたが、馬場さんとの東京決戦より阿修羅原との参戦1発目の放送が待ちきれなかったことをよく覚えています。
そしてここから18年後の現役引退まで続いた全日時代は、馬場さんを蘇らせ、鶴田天龍と切磋琢磨し、三沢小橋をトップに引き上げるという充実の一語に尽きるものになりました。
2大メジャー「NewJapan」「AllJapan」双方の歴史を語る資格があるのは今となってはこの男だけ。
日本にプロレスの殿堂が出来たなら、力道山やBI砲と同時に入っても異論のない功労者、スーパースターだと思います。
今でも新日系のイベントでちょくちょく来日してくれるのは嬉しい限り。
ブルロープ(しかもカウベル部分)でブッ叩くファンサービスはさすがに封印したようですが、ロングホーンからの恐怖の雄叫び「ウィー」はまだまだ健在の模様。
いつまでも日本という国と関わりを持っていて欲しい、ヒールもベビーも日本人もガイジンも超越したプロレス史上最強のグレートテキサンです。