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2013/06/25

タイガーマスク #63「めりけんジョー」

録画した日〔2013/6/14:TOKYOMX〕

もはや形骸化の感もある日プロ・シルバーリーグ。
東北&北陸ツアー(今回は巡業先未公表)が続いているようですが、目下のトピックは伊達タイガーの覆面タイトルを狙う強豪の動向となります。
試合前の正規軍控え室で未知の覆面レスラー談義に花を咲かせるBI砲。
どうやら挑戦者候補はブラックパンサーとイーグルの2選手に絞られた模様です。
まあ、日プロ本流を突き進むBI砲にしてみりゃ、どっちの覆面野郎だろうと知ったこっちゃない、高みの見物の野次馬ネタに過ぎないのでしょう。
ちなみに馬場さん情報によると、候補の1人であるイーグルは「人間発電所サンマルチノの豪快さ」と「(エドワード)カーペンティアの魔力」を併せ持つ凄玉だとの事。
そんな見えない敵(およびぺちゃくちゃウザいBI砲)に焦れ気味の伊達タイガーですが「相手が強いほどファイトの燃やし甲斐がある」と頼もしい爆勝宣言をブチ上げました。
伊達タイガーの爆勝宣言はもちろん虚勢。本当は不安と焦燥に駆られています。
馬場さんはそんなナイーブな愛弟子の王者ゆえの苦しみを看破。
かたや「さすがはタイガー、ビクともしないな」と思慮の欠片もない猪木は、「君は待つことの辛さを知らん」といい年して馬場さんから説教を食らってしまいました。
心ここにあらずの状態で雑魚レスラー・デーモンとの一騎討ちに臨んだ伊達タイガー。
プロレスの芸術品・ジャーマンスープレックスで勝利を収めましたが、その闘いぶりは終始精彩を欠いたものでした。
ただ、当時の日プロは年間200近くの興行を打っていたはず。冴えない日が1日や2日あっても致し方ないところですが…。
しかしこの日の客席には、そんな伊達タイガーに「遠慮しながらやるブレーンバスターなんぞ面白くない」「張り子の虎」「我慢会を見にきたんじゃない」と辛辣な暴言を浴びせる酔っぱらいヤジ将軍がいました。
このKYジジイに他のお客さんはドン引き。
第2次UWFのようなお客さん同士がヤジで対話する観戦文化は確立されていなかったようです。
ただ、このジジイが放ったヤジは妙に玄人目線でポイントを付いてる、レスラーにとっては聞き捨てならないものでした。
そうでなくても真面目でナイーブな伊達タイガー。
気になり出したら止まらなくなって、帰路に着くジジイへのストーキングを開始します。
地元の飲み屋でコンタクトに成功した素顔の伊達タイガー。あくまで1人のタイガーマスクファンとして発言の深層を探りました。
そしてもちろんこのジジイこそ今回の標題である「めりけんジョー」。
プロレス黎明期のアメリカで見世物ファイターとして名を馳せた、玄人目線も至極当然の荒くれジジイということになります。
ジョーがアメリカで繰り広げた闘いは雪中デスマッチやら業火デスマッチやら多種多様。当然リングなどは無く、大自然や街角が舞台となります。
商店街、キャンプ場から浅草花やしきまでも戦場とするインディ団体・DDTの「路上プロレス」プロトタイプと位置付けられるでしょうか。
そんなハードコア戦士・ジョーのポリシーは「見物客あってのプロレスにサービス精神があってなぜ悪い」というもの。
ガチヤオ論争に疲弊する現代のファンにとっては福音の如き名言です。
更に「真剣勝負こそサービス精神」とその理論を昇華させ、悩める伊達タイガーに大きな気づきを与えてくれました。
ジョーの熱きスピリチュアルメッセージに元気100倍の伊達タイガー。
そこに出現した体長5mはあろうかという超巨大ヒグマに対し、待ってましたとばかりノリノリで路上プロレスを仕掛けます。
結果はもちろん、凶獣を華麗なトリックプレーで谷底へ叩き落とした伊達タイガーの完勝。
つい数時間前はヤジ将軍だったジョーから「いい試合だった」とハードコアなお墨付きをもらいました。
家までヤジ将軍を追いかけ、じっくり一晩を費やし自らのシンパに変貌させた伊達タイガー。
ヤジ将軍=クレーマーと置き換えると、サラリーマンの私にもその芸当の凄まじさが良く分かります。
悪く言えばワーカホリックの伊達タイガー。しかし、行動をした人間だけが手にできるモノがあるのも世の真理ではないでしょうか。