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2013/07/28

YUJIRO IN EUROPE 裕次郎の欧州駈けある記

録画した日〔2013/7/24:チャンネルNECO〕

昭和34年9月に公開された紀行映画。
スーパースター石原裕次郎がパリやローマ、コペンハーゲン、アルプス山脈といった欧州の名所を訪れます。
「主役」のみならず監修、ナレーション、カメラマンまでも買って出るノリノリの裕ちゃん。
そのナレーションで「何の役もなく映画に出るのは初めて」と語ったとおり、その役どころは単なる道先案内人。何とも斬新な裕次郎プロデュースのショートフィルムです。
この欧州探訪は『世界を賭ける恋』という作品の北欧ロケ後にもらったご褒美旅行との事。
大エースに太っ腹バカンスをプレゼントしてご機嫌を取りつつ、しっかりロードショー映画を1本作らせてコスト回収するとは、古参映画団体「日活」のしたたかさに脱帽です。
パリの街を闊歩する裕ちゃん。驚くべきはパリっ子に全く引けを取らないそのプロポーションでしょう。
長い脚とシュッとした小顔は当時の日本男児の平均値を軽く凌駕するスペック。
スターの中でも別格扱いされていた事が何となく分かる気がする、世界標準の勇姿です。
裕ちゃんの定番ムーブはビールのグラス飲み。
スイスのホテル、パリのオープンカフェ、ソレント(南伊)のハーバーで実に美味しそうにご当地ビールを飲み干します。
ナレーションによると裕ちゃんはビールが大好物。我々世代が知る「ブランデーグラス」のギミックは歳を重ねてからの後発モノだったようです。
欧州ツアーのエンディングはなぜか銀座松屋前。「日本はやっぱりいいなぁ」と突然のシフトチェンジです。
日本人の海外渡航が自由化されたのは、この作品から5年後の昭和39年の事。
海外カブレしてるとファンの突き上げを食らう時代だったのか、後に憂国の士となるお兄ちゃん・石原慎太郎への気配りだったのかは確認するすべがありません。

今回裕ちゃんが訪れたのはフランス、イタリア、北欧3国、ドイツ、スイスと結構な幅広さ。
ただ内容としては、ヤマなしオチなしイミなしの凡庸極まりないものでした。
現代に置き換えれば1.5~2流タレントのやる仕事。土曜日の朝の情報番組でやってそうなクオリティです。
今の「旅番組」を当時の人々は映画館でお金を払って見ていたという事。
ないものねだりと言えばそれまでですが、私としてはそんな時代が羨ましい限りです。
”映画スター裕次郎”、”海外ヨーロッパ旅行”の2大幻想に胸踊らせて映画館に足を運ぶ(で、少し期待を裏切られる…)。
衣食住から趣味嗜好まで色々満たされまくっている現代に「裕次郎級」のワクワクを提供できるスーパースターは登場してくれるのでしょうか。