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2014/09/25

ノンフィクションW “テヘランダービー”イランが最も熱狂する日 ~サッカーは革命と戦争をこえる~

録画した日〔2014/6/20:WOWOWプライム〕

イランの2大クラブ「ペルセポリスFC」と「エステグラル・テヘラン」による“テヘランダービー”。
その歴史と今年1月に行われた試合を追ったドキュメンタリーです。
それぞれのクラブのルーツは、赤のペルセポリスがテヘラン市民で青のエステグラルはイラン国軍。
テヘランのみならずイラン国民を真っ二つにするダービーマッチには“民vs官”という一触即発の熱いアングルが施されています。
庶民派の赤・ペルセポリスを率いるのはクラブOBのアリダエイ氏。日本代表を何度も恐怖に陥れた現役時代と比べるとけっこうなポッチャリ具合でしょうか。
なおペルセポリスはこのダエイ氏の他、アジジ、マハダビキア、カリミといったワールドクラスの選手を輩出しています。
青のエステグラルは、アジアクラブ選手権を2度制覇しているイランサッカーの大正義。
前エスパルス監督・ゴドビ氏によるとイラン人の半数がサポーターだそうで、庶民派ペルセポリスとのダービー戦績は24勝(17敗36分)とリードしています。
ダービーの舞台はキャパ10万人とも12万人とも言われるアザディスタジアム。
W杯アジア予選などの国際試合においては、その圧力で相手国の選手、サポーターがチビる寸前まで追い込まれる恐怖の建造物です。
このアザディに限らずイランのスタジアムがチビる程おっかないのは、女人禁制でお客さんが全員屈強な野郎どもだから。
このしきたりにより、イラン国内のサッカー好き女性たちはその醍醐味であるLIVE観戦と縁がありません。
スタジアムに入場できるのは9歳の時まで。中には男装をして強行突入する女性もいるとかいないとか。
とにもかくにもこれはイランという国の文化の話。寝っ転がってTV見てる日本人が良し悪しを判断すべき問題ではないでしょう。
理由は不明ですが民のペルセポリス、官のエステグラルともスポンサーはイラン政府だとの事。
そしてこれも理由は不明ですが資金は常にショート気味。両チームの監督や選手はほぼ無給状態でダービーを迎える事になります。
こうしたお金の問題によりペルセポリスの選手達はダービーヘ向けた練習をボイコット。
これを受けた両クラブのオーナーは、決戦前日にタッグを組んで政府へのマイクアピールを敢行。
さらには人件費をポケットマネーから捻出するという超付け焼き刃対応でダービー中止の危機を脱しました。
そんな水面下の葛藤、共闘を知ってか知らずか、当日は各地からサポーターがアザディスタジアムに集結。ただし12万超大観衆とはちょっと遠い客入りに見えます。
肝心の試合結果は0-0のドロー。なんとこれで4試合連続のスコアレスドローなんだそうです。
丸2年、勝ち負けどころか1ゴールも入ってないという由々しき事態。
そのせいではないでしょうが、サポーターは規律正しくおとなしめの印象。
私が想像(期待?)していた、空きビンや発煙筒飛び交う市街戦系のクラブ間闘争は見受けられませんでした。
静かに燃えるテヘランダービー。今回はたまたまだったのでしょうか…。
いずれにしてもこの赤と青の対立は、きっちり横並びでスタートしたJリーグではあり得ない構図です。
いつか日本でもナショナルダービーを。
まずは”読売ヴェルディ”のようなヒール系大正義クラブの出現を願う次第です。