Translate

2013/12/24

田コロ決戦!新日本プロレス闘魂史(#43)

録画した日〔2013/3/30:サムライTV〕

昭和56年9月23日に開催されたブラディファイトシリーズ最終戦田園コロシアム大会からの3試合。
「田コロ決戦」として崇められる昭和プロレスの金字塔です。
9.23田コロを伝説たらしめる所以は、もちろんアンドレ・ザ・ジャイアントとスタン・ハンセンの一騎打ち。
超満員13,500人の大観衆は合計体重400kgの「バトルオブスーパーヘビーウェイト(by古舘伊知郎)」に失神寸前の大興奮状態です。
日本プロレス史上最高レベルのビッグマッチ。何度見ても圧巻なのは人間山脈・アンドレのポテンシャルです。
ハンセン寄りの田コロ観客席を”シャーラァーップ!”とアオり、飛んだり極めたりのジャパニーズスタイルを楽々こなすその勇姿は、日本以外の「何も知らない」世界のプロレスファンにとって驚愕必至のクオリティと言えるでしょう。
コンディション抜群のビッグボスに引っ張られ、ブレーキの壊れたダンプカー・ハンセンもエンジン全開。
230kgの大巨人をボディスラムでブン投げた瞬間は「世界で5人目!世界で5人目!!」の超過激古舘節と共にプロレスファンの間で永遠に語り継がれていくでしょう。
目くるめく肉弾戦は昭和プロレスお約束の場外戦へ。
東スポ・桜井さんの「これはもう、止めようが無いですね」のテキトー解説に見られるように、ファンにとっては既定路線、納得ずくの不透明両リン決着のはずだったのですが…。
闘い足りない両雄はカウントアウト決着に文句たらたら。
これを受けたレフェリー・ミスター高橋、超過激な仕掛け人・新間寿、WWFの悪徳マネ・アーノルドスコーランの超インチキ野郎3人衆は、まさかまさかの時間無制限エクストラマッチを決議しました。
昭和プロレスのレギュレーションを根底から覆す超展開に田コロはこの日何度目かの沸点到達。
この異常テンションに呼応したアンドレとハンセンは、尋常でないハイスパットレスリングを繰り広げます。
大巨人お約束のロープ絡まりムーブもこの日は豪快そのもの。ハンセンも珍しいオーバーアクションでアンドレの渾身芸にレスポンスしました。
エクストラマッチ終盤、黄金の左腕・ウエスタンラリアット炸裂で田コロはホントにホントに大噴火。
昭和のプロレスファンとしてはこれでもうお腹いっぱい。
このうえ完全決着が着こうもんなら死者が出るレベルの阿鼻叫喚壮絶バトルオブスーパーヘビーウェイトです。
そんな世界遺産級の激戦に終止符を打ったのは、右腕にサポーターを巻いたアンドレによる大巨人ラリアット。
その人間凶器がハンセンではなく何故かレフェリー・ミスター高橋に向けられたのは、フランス人アンドレ・ザ・ジャイアント流の謎掛け、エスプリと解釈するべきでしょう。
重厚エクストラマッチの更なるエクストラ番外乱闘では、後のスパークリングフラッシュ・前田日明がハンセンのグローバルハンマー式ラリアットの餌食に。
この日の犠牲者は前田1人だけ。まさしく選ばれし者の恍惚と不安です。

バトルオブスーパーヘビーウェイトの熱風が吹き止まぬまま、田コロ決戦はメインイベント「IWGPアジアゾーン予選」猪木vsタイガー戸口に突入。
その試合開始前のリングには、マット界のドレスコードをパーフェクトに満たした国際軍団・ラッシャー木村&アニマル浜口が陣取ります。
2人の目的は来月に迫った10.8蔵前決戦のプロモ。
超過激予備軍・保坂アナの直撃インタビューを受けた総大将ラッシャーは、出場にあたっての用件とそれに対する準備進捗状況を切々とブチ上げます。
「こんばんは」
「あのですね、10月8日の試合は、わたくし達は、国際プロレスの名誉にかけても必ず勝ってみせます」
「またですね、その試合のために、今、わたくし達は、秩父で、合宿を張って、死に物狂いでトレーニング…、トレーニングをやっておりますので、必ず勝ちます」

狂熱の田コロをクールダウンさせるに余りある、なんとも律儀な対新日宣戦布告。
これこそ、1981.9.23もう一つのレジェンド「こんばんは」事件です。
不意打ちのマイク爆弾、突如襲い掛かった“笑ってはいけない”超過激シチュエーション。
総帥・猪木は陥落寸前となりながらも、持ち前のバーニングスピリットで大惨事の類焼をなんとか食い止めました。
ちなみにこの新日魂は、10年後の1990.2.10東京ドーム「時は来た」事件において極悪バタフライ・蝶野正洋が継承しています。
一気に秋風の田コロに再び熱風を吹き込んだのはラッシャーの懐刀・アニマル浜口。
「オレ達が勝つぞ、10月8日を見てろ!」と実にプロレス的な怪気炎を上げ、大将の失策を気合でリカバリします。
生き馬の目を抜くバラエティ業界で重用され続ける浜さん。
そのキャラおよびバイタリティは、こうした修羅場をくぐり抜けた経験から培われたものなのでしょう。
いろんな出来事にすっかり持ってかれた感のあるアジア予選は、珍しいグランド卍固めでタイガー戸口がタップアウト。
壮大なIWGP構想の実現まで1年を切り、提唱者・猪木のテンションもとりあえず上がってきたようです。

実に27回目の防衛戦を迎えたWWFジュニア王者・藤波辰巳。
アイドル顔負けのカウボーイスタイルは、セコンドのWWF常任理事(!)野末陳平のボンクラ顔とのコントラストも相まって眩いほどの精悍さを誇ります。
翌月にヘビー級へ転向するドラゴンは、必殺ドラゴンロケットをブッ放すなどJr戦士のスタイルで全力投球。
チャレンジャーの孤狼仮面・エルソリタリオを完封し、一心同体、代名詞のディファジオメモリアルをガッチリと守り抜きました。

閑静な田園調布のド真ん中で大爆発した史上最高クラスの神興行。
この3戦の他にもエルソラール脱臼事件(=小鉄の理不尽荒治療)などミラクルが連発しました。
ただし、大巨人の巧さと不沈艦の勇気あるバンプが完全融合した「アンドレ-ハンセン」はミラクルでなく必然か。
日本のプロレスを深く理解する2人だからこそ生まれた昭和のマスターピースと言えるのではないでしょうか。