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2014/05/19

ラストデイズ「勝新太郎×オダギリジョー」

録画した日〔2014/5/1:NHK総合〕

今はなきスターの足跡をそのフォロワーがたどるというコンセプト。
2夜連続の番組で、勝新太郎の次の回は忌野清志郎(vs太田光)でした。
国営放送NHK、およびいかにも求道者っぽいオダギリジョーと勝新のマッチアップはガチンコ度数がかなり高め。
巨匠クロサワとの仲間割れや勝プロ倒産、パンツにxxなど私が大好きなネタ系スキャンダルも苦悩の晩年としてシリアスに描かれます。
かの有名な平成2年成田パンツ劇場。その他諸々の事件簿は当時のニュース(ワイドショー)映像で紹介されました。
映画やドラマと違ってDVD化される事がないこれらのお宝コンテンツ。
シリアスorネタの用途を問わず、NHK以外のTV局でもどんどん放出していただきたいものです。

このリスペクト番組最大の目玉は、昭和53年に撮影された京都茶屋豪遊プライベートフィルムの蔵出し。
なんでも、勝新がTV版座頭市のスタッフ連中を宴会に呼び出して、本業そのままの機材(16ミリカメラx2機ほか)による映像化を緊急勅命したんだとか…。
何とも迷惑な勝新流サプライズ招集。
しかしそこはさすがに最強近衛兵軍団、ドラマと見紛うほどのハイクオリティ映像を後世に残してくれました。
これはブート扱いなんてもったいない、まさにプロショットの「最新」オフィシャル映像。
ジミーペイジだったら即3枚組DVDボックス(特典付き)にして年金稼ぎに走るでしょう。
ネット情報によると、このプライベートフィルムは100分にも及ぶ大作だとの事。
しかし残念なことに今回放送されたのは“パセリ酒”や三味線早弾き芸などのたった2,3分でした。
モヤモヤと残った飢餓感。3枚組DVDボックス(特典付き)の需要は意外とあるかもしれません。

勝新のアーティスティックな側面を語るエピソードとして紹介されたのは、TV版最高傑作の呼び声が高い新・座頭市Ⅱ「#10冬の海」でした。
台本ほっぽり投げて皆んなで行った京都間人(たいざ)の海は、36年経った今も撮影当時のままの風景です。
この神回で重要ポストを託された愛弟子・谷崎弘一も再訪に感慨深げ。
ちなみに谷崎弘一は昭和55年「警視-K」でも部下役(タニ)として登用されたのですが、このアホバカ刑事ドラマは“苦悩の晩年”の1ピースとして紹介されてしまいました…。

番組のいちおうの2枚看板となっているオダギリジョーの役割は、小学校に行ったりオフィスや冬の海に行ったり勝新の足跡を辿ること。
特にオフィスでは海外からのオファー書類やら勝新のメモ書きやら書面系お宝がザクザクの状態でした。
そしてエンディングにはラストデイズを見届けた糟糠の妻・玉緒さんが満を持して登場。
最初っから玉緒さんが色んな所を辿って、随時パセリ酒等のお宝映像を流してくれりゃいいだけの話だったんですが…。
とは言ってみたものの、オダギリジョーの硬派フィルターをとおした勝新の独創性とかっこ良さに釘付けとなった50分。
あらためて感じるのは、スキルフルな裏方さん達の全力サポートが勝新伝説の追い風になっていたという事。
ご本人がいくら天才でも伝説は1人で成就できません。
オダギリジョー氏らフォロワーの中には「勝新太郎」になれる資質がある役者もきっといるはず。
しかし可哀想なことに現代のエンターテイメントの仕組み、枠組みでそれはままならない事なのでしょう。
そんな唯一無二、正統後継者不在の傑物を語り継ぐためにも、やっぱりお宝映像(主にネタ系)は今後もちょくちょく蔵出ししていってほしいと思います。