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2012/11/19

ワールドプロレスリングクラシックス#5「タイガーマスクvs寺西勇ほか」

録画した日〔2012/10/6:朝日ニュースター〕

昭和58年7月7日大阪府立体育会館から「佐山タイガーvs寺西勇」「長州vs藤波」の2試合をピックアップ。
メインは長州・藤波戦。総帥猪木はIWGP決勝のアックスボンバー後遺症により、どっかで休養=バカンスしてました…。
超過激なアナウンサー・古舘伊知郎曰く「リング上はテレビライトの熱さにより40度を超えている」という灼熱地獄の大阪夏の陣。
我らがスーパーヒーロー・タイガーマスクは、内外に向けての確固たる意思表示である赤いマーシャルアーツパンタロン姿ではぐれ国際軍団・寺西勇とのNWAジュニア防衛戦に臨みます。
もはや四次元プロレスを突き抜けてイデオロギー的にも別次元に突入している3年目の佐山タイガー。
分かる人にしか分からないシュートなムーブで様々な「実験」を仕掛けます。
しかしここで特筆すべきは前衛格闘家・佐山ではなく、その変則ムーブににきっちり対応した”和製カーペンティア”寺西勇でしょう。
「いつ何どき誰の挑戦でも受ける」を真の意味で体現する、国際プロ吉原イズムの真骨頂を見せてくれます。
しかし、そんな両雄の格闘スピリットと私を含めた昭和チビッ子ファンの陶酔をブチ破ったのがリングサイドに陣取るノースリーブ野郎「HAWAII83」でした。
次週の札幌決戦で佐山タイガーのWWFベルトに挑戦する「HAWAII83」は、試合後のリングに乱入。何とタイガーと昭和チビッ子の命である黄金マスクをペロンと引っ剥がしてしまいます。
マスクを剥ぎ取られ悶絶するスーパーヒーローを傍目に、NWAの選手権認定証をビリビリに引きちぎる猛デモを披露するHAWAII83。
何という暴挙。全国のチビッ子ファンが怒りに震えるその時、HAWAII83の左上に黄金の物体がフレームインします(!)
黄金の物体はゴールド/オレンジの変則タイガーマスクでした。手負いの佐山タイガーは躊躇せずにそれを被り、怒りの形相で寺西勇&HAWAII83に番外戦を仕掛けます。
この状況を古舘伊知郎は「応急処置的な…」と取り繕い、解説・東スポ桜井さんは「変わったマスクを着けましたねぇ」と東スポイズムですっとぼけ。
ネタの最前線・テレ朝実況席を持ってしても把握できない前代未聞の超展開となりました。
この変則マスクは、リングサイドの熱狂ファンがタイガー絶体絶命の危機を救うべく放り込んだモノというのが定説となっています。
ホビー系とは分からない程のハイクオリティ縫製なマスク。
持ってたファンはもちろん凄い。そしてそれをリングに投げて届いちゃったのも凄いし、更にそれを本番稼動させたタイガー&セコンド陣(高田&山ちゃん)の判断も凄い。予定調和の遥か上を行った大ハプニングです。
この1か月後に電撃引退する佐山タイガーが「プロレスラー」として最後に魅せたフェイクとリアルの綱渡り。
様々な偶然と黄金時代の熱気が生み出した、昭和プロレス史に残る奇跡の名場面と言えるでしょう。

猪木不在のメインイベントは、王者・長州力にドラゴン藤波が挑んだロッカメモリアル・WWFインター戦です。
逆ラリアットに逆サソリと長州を攻めこむドラゴン藤波。
古舘伊知郎のキラーフレーズ「掟破り」は聞けませんでしたが、さすがはハズレのない名勝負数え唄が披露されます。
長州の反則勝ちグレー決着とはいえ死闘の両者には最敬礼、特にドラゴン藤波が光りまくった大熱戦でした。

タイガーマスク終焉直前の昭和58年7月。
この後8月に勃発する大騒動(佐山タイガー引退&猪木クーデター退陣)を予測しうるべくもない大阪のプロレスファンは、超満員札止めの尋常でない熱気で黄金軍団を迎えます。
何事も素晴らしい時間は長く続かない。分かっちゃァいるけど良い時こそそんな事には気づかないものです。
もうちょっと我が世の春が続いて欲しかった。立錐の余地もない大阪府立の大熱狂を見るにつけ、新日がこの後の1ヶ月ちょっとで失うもののバカデカさに絶望ともどかしさを感じてしまいます。