録画した日〔2012/11/5:日テレG+〕
昭和61年10~11月に行われたビッグマッチを中心としたラインアップ。
目玉は第54代横綱・輪島大士のプロレスデビュー戦です。
輪島デビューを10日後に控えた両国決戦。
当初予定されていたメイン戦は、狂乱の貴公子・リックフレアーに革命戦士・長州力が挑むNWA&PWFダブルタイトルマッチでした。
しかしNWA王者フレアーは大怪我により来日をキャンセル。NWA&PWF本部はテキサスブロンコ・テリーファンクを代役として指名します。
体がひと回り細くなりヒール風情の口ひげを蓄えたテリー。
王者・長州のグッドシェイプっぷりとのコントラストもあってか、両国のファンは「往年のアイドル」に微妙な反応です。
なお大ボラアナ・倉持さんだけは往時と変わらずテリーファンク原理主義。最初から最後までテキサスブロンコ大絶賛実況をブチ上げ続けました。
試合はサソリ固め敢行中にセコンドのドリーファンクJrが乱入して長州の防衛。しかし直前にテリーがギブアップをしていたため、お約束の反則決着ではなく白黒はっきりの完全決着となりました。
字面だけで追えば「テリーが長州にギブアップ負け」。
テリーにとっては晩節を汚す格下相手の敗戦、トップ戦線を突っ走る長州にしてもあまり箔が付かない残念なマッチメイクです。
両国決戦のセミファイナルは、王者・スタンハンセンに善戦マン・ジャンボ鶴田が挑んだインターナショナル王座戦。
大流血の末のスモールパッケージホールドで、鶴田が涙のしょっぱい味付けを知る盟友から日本マットの至宝を奪還しました。
輪島デビューの4日前には、馬場さんの地元・新潟市体育館で長州&谷津嘉章vs鶴田&天龍というオリンピック率75%・三役力士率25%のスポーツエリート集結インタータッグ戦が実現。
両リン決着に終わったものの、実況席の馬場さんが「100点満点」とクール解説返上で大絶賛した好勝負でした。
そしていよいよ迎えた昭和61年11月1日石川県七尾決戦。
大横綱・輪島大士の国内プロレスデビュー戦は、馬場+鶴田をセコンドに従えて生まれ故郷からの全国実況生中継という破格の超VIP待遇となりました。
輪島の対戦相手はインドの狂虎・タイガージェットシン。レフェリーは失神上等・ジョー樋口(NWA公認レフリー)。
この時点で10分以内の短期反則決着は火を見るよりも明らか。実況生中継をブチ上げた日本テレビとしては何とも有難いマッチメイクといえるでしょう。
ハイライトは両者反則決着後の場外乱闘。
荒れ狂うタイガー・ジェット・シンにより放り投げられたパイプ椅子が、セコンド馬場さんを直撃してしまいました。
どうしてあの時馬場さんは若手みたいにリング下に座っていたのか。謎掛けを秘めたプロレス史に残る面白ハプニングです。
結果はともかく、地元が生んだスーパーヒーローに七尾市民の皆さんは大熱狂のお祭り状態。
愛が溢れるあったかいデビューを飾れたのは、その人柄はもちろん、馬場さんや鶴田、天龍といった現役メンバーが大横綱・輪島にリスペクトを持っていたからでしょう。
決して順風満帆なプロレス人生ではなかった輪島ですが、その存在感、商品価値は文字どおりの横綱級だったと思います。