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2012/10/27

ワールドプロレスリングクラシックス#194「1987年名勝負集」

録画した日〔2012/8/2:テレ朝チャンネル〕

昭和62年3月26日:大阪城ホール決戦からの2試合。
新日プロ「金曜8時」黄金時代の一翼である超過激実況アナ・古舘伊知郎のラストマッチとしても意義のある放送回です。
前途洋洋で勇退する古舘アナに「実況生活の終わりにして、地獄絵を見せつけられているようだ!」と絶叫せしめたのは、メイン戦に突如乱入した海賊男です。
百戦錬磨のインチキレフェリー・ミスター高橋すら頭を抱える緊急事態。いったい何が起こったのか…。
問題のメイン戦カードは猪木vsM斉藤。
犯罪大国アメリカで収監→1年半の刑期を終えて出所という、プロレス史上空前のギミックを引っ提げての日本復帰となる獄門鬼・マサ斉藤と、それを迎え撃つ新日総帥・アントニオ猪木。
何かと肌の会う両雄の”再会”は、期待どおり一進一退バチバチの円熟好勝負となりました。
そして開始20分過ぎの猪木卍固め最中、ビッグマッチに水を差すようにふらっとリングサイドに現れた白いホッケーマスクの海賊男=ビリーガスパー。
13日の金曜日・ジェイソンをモチーフとした男の左手には凶器の仕込ステッキ、そして右手にはワッパ=手錠が握られています。
やおらリングに乱入した海賊男は一直線にマサ斉藤を襲撃し、自らの右手とマサ斉藤の右手を手錠でドッキング。
アメリカでパクられたマサ斉藤は、復帰初戦大阪のリングでまさかの「再逮捕」となってしまいました。

何とも毒のある新日ならではのブラックジョーク的逮捕アングルと思いきや、リング上の猪木&マサ&ミスター高橋は何故かドン引き。
どうやら海賊男、このビッグアングルで「やらかした」ようです。
海賊男による、プロレス史に残る「やらかし」関連事項は下記のとおり。
  • 海賊男の中身はクロネコ(ブラックキャット)
  • 本来は猪木に手錠をかけて拉致するアングルだった
  • 事前ミーティングで意思疎通ができなかったことが原因(クロネコはメキシコ人=マル・ビクトル・マヌエル、日本語がちょっと苦手)
今は亡きクロネコさん。誰からも愛されたバックヤードの癒し系メキシカンは、この日の大ポカをずっと後悔していたとの事です。
そんなクロネコさんの大ポカですが、修羅場くぐり過ぎの「役者」たちによるウルトラアドリブで後世に残る伝説へと昇華しました。
「どぉって事ねぇよ」猪木と「Go for broke=当たって砕けろ」マサさんは生き生きと大トラブルをエンジョイ。
そこに実況ラストマッチの天才・古舘アナが激流のような迫真実況を畳み掛けます。
さらに何故か猪木のご指名で「戦犯」に祭り上げられた山本小鉄鬼軍曹が、グッドシェイプ&ギラギラ戦闘モードでリングに乱入。
何と猪木に闘魂ビンタをブチ込み、前代未聞のカオスに劇薬を注入。血気盛んな大阪プロレスファンによる暴動を誘発します。

秋にはプロレスバカの真骨頂・巌流島決戦までなだれ込んだ猪木vsM斉藤。
その着火点が半年前の海賊男=クロネコさんだった事は、否定し難いプロレス史の真実と言えるのではないでしょうか。

放送のもう1試合は「越中・武藤vs前田・高田」のIWGPタッグ戦。前田のフルネルソンスープレックスでUWF勢がIWGP戴冠を果たしました。
前田も高田もチャンピオンベルトがよく似合う、まさしくピュアなプロレスラーです。

なおこの大阪大会の放送をもって、古舘アナだけでなく「ワールドプロレスリング」自体も終了。悪名高き「ギブUPまで待てない」へ改編される事になります。
私は高校入学した頃で、何となくプロレスを見逃していた時期。
猪木の白タオルに象徴されるように、良くも悪くも「黄金時代」とは一旦お別れです。
90年代に迎える大爆発への充電期突入、新日史の一つの起点になった大会だったのかも知れません。