録画した日〔2012/8/28:時代劇専門チャンネル〕
渡世人業界のビッグネーム「国定忠治」と座頭市が夢のコラボレーション。
舞台はもちろん上州・赤城山。演じるのは新国劇の超大物・辰巳柳太郎です。
監督・座頭市が描く忠治親分は、年老いてかつての輝きを失った偶像。痛快任侠ヒーローとは程遠い「斜陽」「落日」というフィルターに掛けられた悲哀の老雄ギミックです。
しかし本人はもちろん、往時を共に歩んだ子分や村人たちはその事実を認めたくない。哀しい現実から目を背け、閉塞感に包まれている状況です。
以前受けた恩義から、忠治親分を神様と崇める座頭市。
誰よりも「目を背けたい」立場、心境ではありますが、修羅場を掻い潜ってきた渡世人スピリットはそれを良しとしません。
リスペクトしているからこそ晩節を汚してほしくない…、座頭市はその一心で赤城山へ。一対一直々、忠治親分に渡世人業界からの引退勧告をします。
そして座頭市に背中を押してもらった忠治親分は、潔く引退を決意。大事な子分たちを赤城山に残し、一人寂しく「下野」する事になりました。
忠治親分、座頭市はもちろん、子分の梅宮辰夫や忠治の愛人など、登場人物全員が全編に渡りダンディズムを貫く重厚ストーリー。
標題”赤城おろし”吹き降ろしによる寒さと厳しさが緊張感を際立たせる、ヒール登場なし、ブッタ斬りなしのレア回です。
矜持を持って下野した忠治親分が辿った道は磔獄門の野垂れ死に。それを見届けた座頭市は、次の宿場へクールに旅立っていきます。
監督・座頭市による謎掛けのようなヒューマンドラマ。
気鋭のヒーロー座頭市が、オールドタイプ国定忠治を「斬らずしてブッタ斬った」新時代の正義のプロローグと私は解釈しました。