前編「#21」のあらすじ解説とダイジェスト映像で始まる2話完結バージョンの後編。
座頭市と森繁久彌はタッグを組むのか?斬り合うのか?。2週に渡る重厚ドラマは、監督・座頭市によるその落とし所が焦点です。
前編同様、両巨星を制してストーリーを牽引するのは当時31歳の精鋭・根津甚八。弟分の仇を取るため、孤立無援状態で雌伏の時を送ります。
座頭市&森繁久彌という最強のバックヤードを従えて突っ走る根津甚八は、痺れるほどのカッコ良さ。
そして、彼がスポットを持って行く毎に両巨星の存在感が際立つというケミストリーが発生します。
監督・座頭市による神の采配、マジック炸裂といった所でしょうか。
一歩引いた座頭市と森繁久彌は、まったりと居酒屋トーク。演技ともアドリブとも付かない6分超の掛け合いは名人芸の域です。
その中で森繁久彌は、根津甚八=自分の息子というメタファーを座頭市&茶の間に投げかけます。
しかしこの案件に明確なアンサーはありません。謎を掛けっぱなしで「あとはオメエさんで考えな」という座頭市流のエンターテイメントと解釈しました。
クライマックスでは、座頭市のアシストを受けた根津甚八が仇敵・船戸順チームを殲滅。
それと同時刻に、森繁久彌は単身小池朝雄チームに乱入し、一撃で敵方ボスを仕留めます。
自らの義を貫いた根津甚八と、親分への忠義を果たした森繁久彌。
結果的にヒール軍一掃で一件落着のハッピーエンドと思いきや、森繁久彌の渡世人スピリットはこれを良としませんでした…。
友情や私情よりも渡世人としてのロイヤリティを重んじた森繁久彌は、親分の仇に当たる座頭市斬りを敢行。
しかし、座頭市は渾身の居合い斬りで森繁久彌を返り討ちにします。
役者稼業的側面でも次代を担う根津甚八に対して、監督・座頭市とともに体を張ったメッセージを送ったのかも知れません。
ちょっとした映画1本分の大作ですが、昭和の茶の間と同様に、前編の後1週間妄想をふくらませて後編を見るのがベストだと思います。
ともかく文句なしの傑作。
座頭市&森繁久彌&根津甚八の三者三様の男気にメッタ斬りにされる、濃厚極まりない見事なストーリーでした。