超大物・三船敏郎が参戦したシリーズ20作目。
公開は昭和50年1月、興行的には座頭市最大のヒットとなったそうです。
大映(勝プロ)vs東宝(三船プロ)という団体の枠を超えた夢の看板一騎討ち。
ただこの手の交流戦アングルは得てして当たりさわりの無い花相撲になってしまうもの。
プロレスファンとしては、凡戦の末の両者リン決着を受け入れる予防線を張っておくべきでしょう。
三船敏郎はそのヒール軍の凄腕用心棒。外敵にして賞金クビである座頭市抹殺を請け負います。
ストーリー序盤で展開された両雄のマッチアップは当然のドロー決着。
そもそも休養目的だった座頭市と聾唖者を斬りたくない三船敏郎は、お互いを「バケモノ」「ケダモノ」と呼び合いつつ奇妙な交友を深めていきます。
クロサワ映画を見た事がない私としては元ネタ「用心棒」「椿三十郎」とのコントラストがよく分からないのですが、座頭市を凌駕するワールドクラスの貫禄は存分に伝わってきました。
そんな三船敏郎を「先生」と頼るヒール軍ボスは米倉斉加年。器の小さいヘタレ系です。
その父親である滝沢修は役所から金塊をちょろまかしてるこれまたヒール野郎。息子・米倉斉加年はこの金塊を狙っています。
座頭市は父親サイドと契約することで、ヒール父子の骨肉抗争に首を突っ込みました。
空前のビッグマッチだけあってディーバも超豪華。両雄に格で伍する大女優・若尾文子が抜擢されました。
その役どころは米倉斉加年に借金を作ったために汚れの身となった居酒屋女将。
しかし、座頭市からすれば優しくしてもらった3年前の良いイメージが残ったままです。
若尾文子の本命は敵ポジションながら常連客の三船敏郎。
ここで座頭市は三角関係を回避。それどころか滝沢修からもらった契約金200両を三船名義で若尾文子に手渡すという、オクテな恋愛ベタのいい人として立ち回ります。
一方、金塊を巡るヒール父子の抗争はクールなピストル使い・岸田森まで参戦する泥沼模様。
メインの「座頭市vs用心棒」につなぐ前座ネタながら、出てくる連中が全部悪人というお腹いっぱいなカオス。座頭市お得意の勧善懲悪とはやや趣を異にするストーリーです。
座頭市はこの時点で大流血という不利な状況。さらに三船敏郎の足を斬った際に仕込み杖が折れてしまうアクシデントにも見舞われてしまいました。
しかしそこに乙羽信子(岸田森のピストルで撃たれてダウン中)が意識を取り戻したとの報が…。
これにより頂上決戦は急転ドロー決着に。
絶体絶命の座頭市は、ドラゴンストップならぬ乙羽信子ストップにより九死に一生を得た事となります。
ゴジラ(東宝)vsガメラ(大映)とも謳われた大一番は予想どおりエクスキューズたっぷりの痛み分け。
強いて言えば座頭市がアウェイの三船敏郎に花を持たせたかたちでしょうか。
いずれにせよ、その勝敗より実現した事に重きを置くべき夢の団体交流戦です。
巨星同士の「2人の世界」でズブズブ進むと思いきや、乙羽信子、米倉斉加年、岸田森らの脇役がきっちりお仕事。ネタの1つ1つにちゃんと必然性がある筋の通ったストーリーだったと思います。
ただせっかくのドリームマッチ、もっと無茶苦茶で荒唐無稽なアホバカストーリーが見たかった気もします。