超大御所・森繁久彌が主宰する30分のトーク番組。
放送開始は昭和57年4月。高倉健→黒柳徹子→金やん父子→井上靖という豪華リレーを受けた#5のゲストは、我らが勝新太郎でした。
番組が始まったのにヒソヒソ話に夢中の2人(チョメチョメ話だった模様)。
「あぁ、もう始まってんの?」とすっとぼける勝新を「皆さまが聞いてもいいようなお話をしていただかなきゃ…」とたしなめる森繁。
芸道覇権を獲った両雄のトークバトルに早くも名勝負の予感が漂います。
ちなみにそんな2人の歳の差は「18」。けっこう離れてます。
森繁の口撃のとおり、勝新は前年に「勝プロ」がブッ潰れて12億もの巨額負債を抱える身。
しかしこの番組では「女は母さん、男は父さん(倒産)」「オレは一人前の男になりつつある」などと債権者を逆なでする妄言を次々投下。
ただ、こんなニッコニコ顔で言われたらお金なんてどうでも良くなっちゃいそうです。
そしてなんと森繁も勝プロ債権者の1人だったという事実も発覚。
勝プロ作品に幾度となく出演している森繁は、全部「友情出演」と言いくるめられてギャラを1円も貰えてないんだとの事でした。
反省のカケラもない勝新は近々郵便貯金ホールでのコンサートを控えてるそう。
「貯金だなんて名前が良くない」と言いつつキャパ1,500人の大箱公演にノリノリの勝新でしたが、森繁は「我々仲間も4,5人は行く」とチクリ。
これには勝新も「誰もコン(来ん)サート…」とがっかりです。
江戸時代に書かれた“フロイス日本史”を最近読んだというインテリ森繁から「本を読みなさい」と諭されたグータラ勝新。
「うん、あぁフロイス。フロ、イス…、風呂の椅子って覚えりゃいい」と渾身のボケを返しますが、呆れた森繁に淡々とスルーされてしまいました。
そんな勝新が一転しんみり語ったのはこの年亡くなったお母さんの話。
有名な「俺を産んでくれたところに顔を…」というエピソードも披露されました。
Wikipediaにも出ているこのネタは、もしかして日曜お昼のこの番組が起源だったのでしょうか。
そしてお母さんが眠るお棺に禁酒を誓ったという勝新。しかしテーブルにはトーク冒頭からハイペースで空けてるウイスキーのグラスが…。
森繁円熟のツッコミに勝新はニヤリ。いい話がすっかり台無しです。
こんな感じで勝新の人たらしっぷりをレジェンド森繁がノラリクラリ引き出す展開となったこの番組。
お酒が入ったせいもあるでしょうが、まったりとかユルいとかいったフレーズが当てはまる味わい深い30分1本勝負でした。
私が小学生の頃からすでに大長老だった森繁翁。
放送当時は69歳。亡くなったのはつい最近の2009年。享年96歳での大往生でした。
まさしく森繁久彌でなければ成り立たない、昭和の重厚なトーク番組です(ただし今回を除く)。