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2014/12/10

武田鉄矢の昭和は輝いていた #85「希代の名優・勝新太郎」

録画した日〔2014/12/3:BSジャパン〕

昭和を飾った人や出来事にスポットを当てる番組。
今回は“稀代の名優”として勝新太郎が取り上げられました。
グラスを掲げ満面のスマイルを振りまく我らが勝新。これは昭和57年に開催されたディナーショーからのお宝映像です。
ちなみに「THE MAN NEVER GIVE UP」とは同年リリースのアルバムタイトル。
借金、倒産、バカ息子(娘)など当時次々とみまわれた自業自得案件にも決して屈しないという、漢・勝新渾身の決意表明と解釈できるでしょう。
唄うは、アップテンポにアレンジされながら艶っぽい仕上がりの名曲「慕情 ~Love Is a Many-Splendored Thing」(歌詞は英語のまま)。
和洋なんでもこの方が唄えばそれ即ち「勝新バージョン」。粋人の面目躍如です。
BSジャパンはディナーショーに強いのか、平成5年大阪大会の貴重映像も放出。
お客さんはもとよりご本人が一番楽しそうな極上エンターテイメント。そのアトモスフィアを体感できなかったのが私としては残念でなりません。
大阪大会からのチョイスは定番「マイ・ウェイ(日本語詞)」。熱唱の末ステージで昇天するその勇姿はジムモリソンを彷彿とさせます。
ちなみにこれらライブ映像に当てられた時間はたったの3,4分。完全版のリリースを切に望みたいところです。
この番組の目玉はこうした秘蔵ライブ映像ではなく、糟糠の妻・玉緒さんの参戦。
「勝新なしでも存在し得る…」のとおり単独でも超S級の技量を誇るバラエティ女王ですが、ここでは夫をたてる語り部に徹していた感じでした。
一方ホスト役の金八は「不知火検校」「悪名」「座頭市」といった一連の作品群に完全対応。ネタ揃えは玉緒さんを凌駕するレベルです。
これは技量や知識量という話ではなく先人に対するリスペクトがあるからこそ。
それより何より、ビッグスター・勝新の事が大好きでたまらないのでしょう。
ちなみにもう一人のゲストは、TV版座頭市のリアルタイム世代で勝新ムーブをステージに取り入れているという“クレージーケンバンド”ケン氏。
こうした愛のあるメンバー構成のため、パンツ系の不謹慎ネタは出てきませんでした。
しかしそんな中ひとつ気になったのは、ケン氏の隣、テーブル端っこの席がずっと空いている事。なにやらイヤな予感が漂います…。
そして終盤に出現した「警視-K」の巨大ロゴ。
玉緒さんや金八の献身トークをブッタ斬る、昭和で輝けなかったクソドラマへの不可解スポットです。
こうなると「空席」の行方は確定。クソドラマをクソドラマたらしめたあの超良血女優が勇躍参戦を果たしました。
空席を埋めたのはもちろん奥村真粧美。
ますますお父さんに似てきた彼女にとって「警視-K」はデビュー作にして代表作。見ている側としてもこの人あってこそのクソドラマです。
席順のいたずらで母娘タッグの超ド級サンドイッチ攻撃を食らってしまったケン氏。名フレーズ「オレの話を聞けぇ!」を出す余地などありません。
勝新の語り部としてまだまだ駆け出しの氏にとっては、デビュー戦でいきなりハンセン&ブッチャーを当てられた谷津嘉章のような思いもよらぬ災難だったのではないでしょうか。
石橋蓮司がシュートを仕掛けられたシーン(#1)を丁寧に解説するなど、TV版座頭市と同じボリュームで扱われた警視-K。
そしてここでも素晴らしかったのは金八の対応力、引き出しの多さ。
褒める所なんかないはずなのに「初めて音声にピンマイクを使った。画期的。」など業界におけるこのドラマの存在価値をプッシュしてくれました。
いろいろあって映画やTVという遊び場を奪われた晩年、勝新は玉緒さんと舞台をこなしていました。
宣伝がてらの稽古風景は、なんとなくワイドショーで見た記憶あり。
ただしメインは昭和のスーパースター勝新ではなく、当時バラエティ業界を席巻していた玉緒さんだったような気がします…。
この手のリスペクト番組で楽しみなのは「本業」以外のおもしろ映像放出。
時間的には微々たるものでしたが、今回はディナーショーが見られて取りあえず満足でした。
ただ、BSジャパンは関東のアナーキー・TV東京系。もうちょっと何かなかったかなぁ、という気も。
実は一番良かったのはMC金八=武田鉄矢が随所に見せた勝新愛だったかもしれません。