Translate

2014/09/17

新座頭市 破れ!唐人剣

録画した日〔2014/1/30:日本映画専門チャンネル〕

昭和46年1月に公開されたシリーズ22作目。
中国人剣士と座頭市のふれ合いと過酷な運命が描かれます。
三波伸介率いる地元のチンピラ“てんぷくトリオ”と仲良く情報交換する座頭市。
今回はシリーズ初となる国際試合。我らが日本代表ダークヒーローは心身とも上々のコンディションであるようです。
一方、中国代表は香港のジミー・ウォング(=王羽=ワン・ユー)。
昭和18年生まれ当時28歳のウォングは現地で“天皇巨星”と称される超大物スター。
ひと回り年上の座頭市(昭和6年生まれ)は、そんなウォング天皇に実直系正義漢ベビーフェイスギミックを献上しました。
ウォングのメイン武器は短剣。これにジャンプやバク宙など香港の定番ムーブを織り交ぜたトリッキーなファイトスタイルが持ち味です。
ただし、ウォングの来日目的はかつて共に修行をした日本人住職を訪ねる事。
座頭市との日中決戦どころか、争い事から開放される癒しの旅となるはずでした…。
闘う必要のないのウォングと座頭市を結び付けたのは日本住まいの中国人ちびっ子。
この子の両親が役人に斬られるシーンに居合わせたウォングは怒りのメッタ斬り。賞金首の逃亡者となってしまいます。
かたや座頭市はこの子が泣いているところに通りかかり、例によって行きずりで面倒を見る事となりました。
やがて座頭市&中国人ちびっ子は逃亡中のウォングと合流。ここでミソとなるのが言語の壁です。
言葉だけでなくアイコンタクトもできない座頭市は、味覚からの切り崩しとしてオニギリ外交を展開。
日中ハードボイルド2人がこうして次第に心をかよわせるシーンはほっこりと味わい深いものがあります。
日本語を少し話せるちびっ子の機転もあり程よく意思疎通ができた3人は、ウォングの修行仲間の住職がいる栃木県間々田を目指すことに。
とりあえずこの日は、人が良くて清貧で一人娘がいて町外れというフラグてんこ盛りのお宅に匿ってもらう事になりました。
翌朝お酒の買い出しに町へ下りて行った座頭市は、よせばいいのに顔芸豊かなてんぷくトリオと飲み&博打を敢行。
そしてやっぱりその間に地元ヒール軍が町外れのお宅を襲撃。ウォングとちびっ子は難を逃れたものの健気な一人娘が連れ去られてしまいました。
ヒール軍本拠に乗り込んだ座頭市は親分・安部徹を耳そぎ刑に処した上で無事に娘さんを解放。
しかしウォングおよび娘さんからすると座頭市は居場所を密告した下衆野郎。
もちろん誤解、濡れ衣ではありますが、てんぷくトリオと油を売っていたせいで座頭市の信用は地の底まで失墜してしまいます。
座頭市に「裏切られた」ウォングはちびっ子&娘さんと共に間々田のお寺に到着。かつての修行仲間・南原宏治にあたたかく迎え入れられました。
霊験あらたかな神社仏閣はヒール軍の襲撃対象外。
闘いに疲れたウォングにようやく癒しの時が訪れたと思われたのですが…。
どっからどう見てもヒール顔の南原宏治に「悪い事すんなよ」と言うのは無理な話。
このクソ坊主はさっそく金目当てで旧友ウォングの居所をヒール軍へ密告。その結果ちびっ子が人質としてさらわれてしまいます。
一方、密告疑惑が晴れない座頭市はちゃっかり地元サロン嬢・浜木綿子といい仲に。
ただもちろんウォング案件から逃避したわけではなく、浜木綿子とてんぷくトリオの力添えのもとちびっ子奪還に見事成功しました。
怒りに燃える座頭市は一気にヒール軍征伐へ。
親分・安部徹をブッタ斬り、クソ坊主・南原宏治らに孤軍対峙しているウォングの救出へ馳せ参じます。
ちなみにこの座頭市vs安部ヒール軍のシーンは硬軟織り交ざった仕掛けが満載。勝プロ金掛けてんなぁ、という極上のクオリティでした。
アクションの達人・ウォングは座頭市の到着前にヒール軍を完全粉砕。夢の日中剣豪タッグ結成はなりませんでした。
それどころかウォング的に座頭市は「クロ」の裏切り者。
言語の壁が最悪の形で立ちはだかり、2人は真実を共有できぬまま無常の一騎打ちへと突入します。
静の座頭市と動のウォングといった趣の日中決戦。
京都太秦と香港ではいろいろと殺陣の作法も違うはずですが、そこは百戦錬磨のトップスター同士、エンタメ系ポテンシャル全開でガッチリとロックアップしました。
ラストは座頭市がミリ単位の剣術でウォングに勝利。
ただしこれはあくまで日本版だけのもので、香港公開版では香港の巨星・ウォングが日本の座頭市を葬り去るラストにすげ替えられたというのが定説です。
そしていまだ発掘されていない勝者ウォングバージョン。
香港映画&勝プロというネタ要素満載ユニットが織りなした、実にアヤシイ昭和のミステリーと言えるでしょう。

座頭市お得意の勧善懲悪アングルが適用外となる異色作。
日中ダークヒーローが珍道中を繰り広げつつヒール連中をブッタ斬っていくものだと思ったら大間違いで、これもある意味お得意と言える両雄並び立たないバッドエンドが用意されていました。
テレビ版から入った私にとって、テレビに出る前の座頭市を見るのはこれが初めて。
場面場面でことごとく痛快でカッコいい、キメポーズ&キメ台詞連発の「映画スター」座頭市に大満足です。
HDDにはまだまだ多数の「映画版」が眠っている状態。
大好きなドカ食いムーブの変遷をたどるなど、暇を見つけてランダムに消化していきたいと思います。