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2013/05/19

ポール・マッカートニードキュメンタリー「THE LOVE WE MAKE」

録画した日〔2013/2/8:WOWOWライブ〕

慈善ライブ「The Concert for New York City」(2001.10.20マジソンスクエアガーデン)の提唱者であるポールマッカートニーを追い掛けたドキュメント映画。
公開は「9.11」から10年経過した2011年でした。
9.11の朝、まさにその瞬間をNYケネディ空港で目撃したポールマッカートニー。
もちろんフライトはキャンセルとなってそのままNYへ居残り。そこから一ヶ月足らずで超豪華巨大スケールのライブ開催に漕ぎ着けたとの事です。
作品前半では、ライブ開催に向けてリハーサルやTV出演に奔走するポールに密着。
しかしそこに緊迫感や悲壮感はほとんどなく、思いのほかユルい等身大の天才ミュージシャンの姿が映し出されます。
リバプール出身のポールは大都会ニューヨークが大好き。好きな野球チームは名門・NYヤンキースだそうです。
そしてなぜか"お散歩"も大好きなようで、摩天楼界隈を自由にブラブラ歩いたりします。
しかし言うまでもなくポールは世界最強、国家元首クラスのセレブ。好奇心旺盛なニューヨーカーがこの「ポー散歩」をほっとく訳がありません。
サインや握手をねだられるのは当たり前。泣き出す女性やらライブ共演を懇願するアブナイ自称ミュージシャンやらを、ポールは良くも悪くも適当にあしらって行きます。
60年代のいわゆる「ビートルズ状態」と比べればどうってことないニューヨーカーの追っかけ。
ただ、よくよく考えるとこの散歩時のNYは9.11直後の空前の厳戒態勢だったはずです。
そんな「戦時下」のNYをビビることなく飄々と闊歩するポール師匠から、ミスター長嶋さん的な天才系スーパースター特有の大らかさが伝わってきました。
素顔のポールは、ファンをないがしろにする文句なんかを吐いたりもします。
しかし独善的でイヤな奴というイメージには全く至りません。
見てる側からすると「まあ、これぐらいの事は言ってんだろうな」というレベル。逆に「ポールはこれぐらいの事しか言わないのかも…」とも思わせる絶妙なベビーフェイス戦術です。
そしていよいよ幕を開けるベネフィットライブ。
ミックジャガー&キースリチャーズ、ザ・フー(ドラムはリンゴスターの息子さんが担当)、エリッククラプトン等々、ポールの同級生世代を中心としたワールドフェイマスな超スーパースターが集結しました。
スーパースター連中とポールの雑談シーンも多数ピックアップ。時代を熱狂させた大物同士のツーショットは強烈無比、それだけで名場面です。
ただ私としては、ミック&キースとの三者会談がなかったのが少し残念。ビートルズとストーンズ、ギミック上のライバル関係は今だ継続中という事なのでしょうか。
ポールの楽屋に乱入してきた元合衆国大統領・ビルクリントン。モニターの中でシャウトしてるのはミックジャガーです。
このクリントンの他、ハリソンフォード、レオナルドデカプリオ等々の非ミュージシャン系超大物セレブもこのNYライブに賛同、参加していました。
ちなみに我らがミックとキースは「MissYou」と「Salt Of The Earth(地の塩)」を披露しましたが、この映画で採用されたのはミスユーの一部だけ。ポールも含めた他のミュージシャンも同じ扱いです。
あくまでドキュメント映画なのでこれは至極当然の構成。ポール的には、演奏見たけりゃDVDでも買っとけというスタンスとなります。
準備期間一ヶ月足らずながら大成功に終わった超弩級チャリティーライブ。
これもすべて、世界の偉人・ポールマッカートニーがその中心にいたからこそでしょう
そして私がこのドキュメント全編を通じて凄いと思ったのは、そんなポールから、やらされてる感、やってるぜ感のいずれも伝わってこなかったという事です。
世界が自分に期待する事と自分が世界に与える影響力を客観的に把握しているポールからすれば、9.11の極限状態でも深く考えず自然にその役割を果たしただけなのかも…。
まさしく「レット・イット・ビー」。音楽だけでなく、行動哲学においても天才肌のスーパースターなのでしょう。
不謹慎ではありますがテロへの憐れみや追悼をも忘れてしまうほどのポール満載ドキュメント。
淡々としたタッチなのに不世出の天才・ポールマッカートニーの魅力がやたらと増幅される、不思議なパワーを持った作品でした。