昭和50年ストーンズ北米ツアーの7.13LA公演。
会場は名門「The Forum」。5連戦の4日目にあたります。
“みんなも参加してくれ”とのミック号令でステージトップに密集した輩ども。むさっ苦しく「You Gotta Move」をコーラスしました。
ストーンズ本隊+陽気な仲間のコラボという、'75-76ツアーの特色がよく現れたシーンです。
その陽気な仲間とは、ピアノ系ビリープレストンとパーカッション系オリーE.ブラウンの底抜けアメリカン2人。
ビリーは既に他界していますがオリーEはご健在。なぜか不動産仲買業者(realtor)、高校バスケ指導者の肩書が記されるなど、Wikipedia(日本語版なし)からは未知の強豪ムードが漂います。
ビッグバンを想起させる超巨大モジャモジャ頭のビリープレストン。
この北米ツアーでは、なんと前座ではなく本編にソロコーナーをブッ込んでもらうという異例の好待遇を享受。誰からも愛される宇宙一のモジャモジャです。
かくしてビリーはオリジナル曲「That's Life」「Outta Space」を堂々熱唱。
さらにこれに飽きたらずステージど真ん中でキレッキレダンスを炸裂させる暴れっぷりを披露。
モジャモジャが放つこのポジティブパワーに根暗ベース野郎・ビルワイマンは隅っこで硬直、完全に戦意喪失となりました。
躍動するモジャモジャに大興奮のLAっ子。
こうなると“俺様”ミックジャガーは黙ってられません。
トイレ休憩を早めに切り上げたショーの主役は爬虫類系のジメッとしたムーブでダンスに乱入。ビリーに真っ向勝負を仕掛けます。
しかしここからステージはまさかの超展開へ。
「ミックを宇宙へ飛ばすぞ!(Outta Space)」とビリーが吠えるとミックはワイヤーにぶら下がって会場の天井まで急上昇。L.Aで宇宙遊泳という驚愕の猛デモをブチ上げました。
そんなブッ飛んだL.A大会はステージ自体も仕掛けが満載。
蓮の花型360度ステージ(ロータスフラワーステージ)は総重量25トン。花びら部分は水圧で開いたり閉じたりします。
ちなみにこの仕掛けを気に入った「TheWho」の超危険人物・キースムーンは、ステージを丸ごと買い取って軍用機で運んで自宅の裏庭に置いたんだとか…。
実にロックンロールな大ボラサイドストーリーといえるでしょう。
ロータスフラワーには危なっかしい仕掛けがもう1つ、チャーリーワッツの前に開閉式の穴ボコが開いています。
もちろんこの穴はドスケベソング「StarStar」のハレンチ風船発射用。
またがって1人御柱祭を敢行するミックが滑って巻き込まれて穴に落っこちたりしないかヒヤヒヤものです。
終盤「Jumpin' Jack Flash」では噴霧器搭載のジャバラ式ドラゴンが出現。
ミックはオリーE.ブラウンとの共同作業で毒ガスを撒き散らしますが数十秒で撤収。このドラゴンの頭、けっこう重そうでした…。
エンディングでもとまらないミックの悪ノリ。
「Sympathy For The Devil」の曲中どっかに居なくなったと思ったら、穴の中からムクムクッとせり上がって登場。気分は人間ハレンチ風船といったところでしょうか。
そんなやりたい放題のミックはもうすぐ32歳の誕生日(7.26)を迎える身。
いつが全盛期/絶頂期なのかこの人の場合よく分からないのですが、この日も相変わらずのグッドシェイプで絶好調だった事は間違いありません。
陰と陽だか静と動だかとにかく変幻自在のエンターテイメントを展開しました。
そして忘れちゃいけないキースリチャーズ。
ソロパートが外様のビリーより少ない冷遇などこの男には無問題。「HAPPY」の歌い出しに乗り遅れる小ボケ、および相方ミックとの熱いマイク一本芸はこの日も健在です。
そういえば忘れてたのが、このツアーはロンウッドの初陣だったという事。
コミュ力抜群の非正規社員(正式入社は17年後の1993年)がその後ストーンズにもたらした功績は計り知れません。
「Wild Horses」ではミック、キースとのトリプルボーカルが実現。
2人にイジメられ(推測)、終始ステージの隅っこでモジモジしていた前任者ミックテイラーでは考えられないストーンズの新境地です。
タバコ吸い放題、お酒飲み放題のステージで披露されたセットリストは以下のとおり。
- Honky Tonk Women
- All Down The Line
- If You Can't Rock Me から Get Off Of My Cloud へメドレー
- Star Star
- Gimme Shelter
- Ain't Too Proud To Beg
- You Gotta Move
- You Can't Always Get What You Want
- Happy
- Tumbling Dice
- It's Only Rock'n Roll
- Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker)
- Fingerprint File
- Angie
- Wild Horses
- That's Life ※ビリープレストン
- Outta Space ※ビリープレストン
- Brown Sugar
- Midnight Rambler
- Rip This Joint
- Street Fighting Man
- Jumpin' Jack Flash
- Sympathy For The Devil
特に「Brown Suger」以降のノリは圧巻で、アンコール前「Jumpin' Jack Flash」ではバケツ聖水パフォーマンスも披露されました(もちろん最後はミックもズブ濡れ)。
締めは「Sympathy For The Devil」にノって奇人、変人、淑女、アバズレいろんな連中とロータスフラワーをぐるぐる大行進。
60年代のオドロオドロしいナンバーがにぎやかなフリフリのサンバへ変貌。時代の頂点を極めた王者だからこそできる余裕の超解釈です。
“ファンキー”というフレーズがぴったりハマる'75のストーンズ。
シンセサイザーがキンキン(戦犯=ビリープレストン)で音としてはあまり馴染めないんですが、映像は歴代屈指、抜群の面白さだと思っています。
このL.Aやら'81ハンプトンやら、もはや出せないものはないだろうって状態のストーンズアーカイブ商法。
次はL.Aと同じ顔ぶれでプレイされた'76パリ屠殺場大会あたりを公式リリースしてほしいところです。